外壁材「ALCパネル」とは?種類やメリット・デメリット、使用する際の注意点などについて解説!
2022.05.15
こんにちは、佐賀市の外壁塗装・屋根塗装専門の工務店「サニー建設商事」の江川です。
今回は、外壁材の種類のひとつ、「ALCパネル」についての内容です。
「新しいお家の外壁材を何にしようか迷っている・・・」
「自分の家の外壁はALCパネルだけど、どんな外壁材か詳しく知らない・・・」
こういったお悩みを持つ方は少なくないと思います。
この記事では、
「ALCパネルは何に使うの?」
「ALCパネルとサイディングはどっちがいい?」
「ALCパネルはいつから使われている?」
「ALCパネルってなんの略?」
「ALCパネルは何でできている?」
などの疑問にお答えしていくほか、メリットやデメリット、施工をする際の注意点、価格相場などについてご説明していきます。
それでは参ります。
目次
ALCパネルとは
ALCとは、「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の頭文字をとった言葉で、珪石(けいせき)やセメント、石灰、発泡剤を高音高圧の蒸気釜の中で蒸気養生を施した「軽量気泡コンクリート」のことを指します。
このALCを板状に成形したものが「ALCパネル」というもので、1930年に北欧で発明されて、1963年に日本で生産が開始されました。
一般にコンクリートと聞くと重いものをイメージされがちなのですが、「軽量気泡コンクリート」ではその名の通り、内部に気泡の穴が開いており、コンクリートでありながら非常に軽いことが特徴です。
その軽さは水に浸すと浮くほどで、通常のコンクリートの約4分の1という軽さを誇ります。
この気泡の空気が層を作って熱の伝わりを抑制することで、夏の暑さや冬の寒さの中においても室内の温度を一定に保つ断熱効果の役割を果たしてくれます。
また、ALCパネルは耐久性にも優れていることから、戸建住宅から高層ビル、ショッピングセンターや倉庫まで幅広い建築物において、外壁・屋根・床用などの構造材料に用いられています。
北極圏や砂漠地帯などさまざまな場所で用いられている建築材で、日本でも東京スカイツリーや東京都庁などで使われています。
ALCパネルの種類
ALCパネルにはいくつか種類があり、その分け方は3つあります。
1.厚さ
2.形状
3.表面加工
それぞれ説明していきます。
1.厚さ
厚さにおいて、ALCパネルは以下の2種類に分けられます。
・厚型パネル:厚さが75mm以上
・薄型パネル:厚さが35mm以上75mm未満
これら厚型・薄型の2つのパネルは、異なる場所で用いられます。
厚型パネルは、主に高さ31m以下のビル・倉庫・工場などの強固な建物や耐火建築物において用いられ、薄型パネルは、主に軽量鉄骨造の住宅や木造住宅などで用いられます。
この薄型・厚型のパネルは、下で説明する形状や表面加工の違いによってさらに種類が分かれます。
2.形状
形状においては、以下の2種類に分けられます。
・一般パネル
・コーナーパネル
一般パネルとは、外壁の平面部分に使われる平らなパネルのことを指します。
コーナーパネルとは、建物の四隅に使う L字型のパネルのことを指します。
これらは形状が違うというだけで、頑丈さや素材、模様に違いはありません。
3.表面加工
表面加工においては、以下の2種類に分けられます。
・平パネル
・意匠パネル
平パネルとは、模様のないパネルのことを指します。
意匠パネルとは、ラインやチェック模様などのデザインが施されているパネルのことを指します。
特に要望がない場合は平パネルが使用されます。
その他の外壁材との比較
ALCパネルと他の外壁材との比較は、下の表のようになっています。
1.サイディングとの比較
まずは、日本で最も流通量の多いサイディングボードとALCパネルの比較です。
サイディングボードは、「窯業系」「金属系」「樹脂系」「木質系」の4種類に分けられます。
今回は、その中でも特に流通量の多い「窯業系」と「金属系」との比較をしていきます。
まずは、ALCパネルと窯業系サイディングの比較です。
窯業系サイディングは、日本の戸建のうちの7割以上のシェア率を誇る現在最も主流な外壁材です。
デザインのバリエーションが豊富であるという特徴をもっています。
耐久性・防火性・耐震性などではALCパネルの方が優れていますが、値段のお手頃さでは窯業系サイディングが優っています。
そのため、「コスパ良くおしゃれなデザインにしたい」という方には、窯業系サイディングの方がお勧めです。
次に、ALCパネルと金属系サイディングとの比較です。
金属系サイディングは、アルミやガルバリウム鋼板などの金属板と、断熱効果のあるウレタンなどの板によってできたサイディングボードです。
ひび割れのしにくさや、目地(コーキング)の劣化のしにくさなどのメリットがありますが、断熱性が低いデメリットがあります。
全体的に見るとALCパネルの方が性能が高いため、予算に余裕があればALCパネルの方がおすすめです。
2.モルタルとの比較
モルタルとは、セメント・水・砂を2:1:5の比率で混ぜ合わせた外壁材で、コーキングの補修の心配が不要である点が特徴です。
耐火性にも優れており、サイディングボードが主流となる前は、モルタル壁の戸建住宅が多く見られました。
しかし、モルタルにはひび割れを起こしやすい点や、汚れが付着しやすい点などのデメリットがあるため、ALCパネルの方が性能面において優れています。
3.タイルとの比較
外壁材としてのタイルとは、土や石を高音で焼き固めたものを言います。
非常に硬く、ほとんど吸水しないことから、耐久性に非常に優れています。
塗装を必要とせず、メンテナンスコストが他の外壁材より圧倒的に安いのも特徴の一つです。
ALCパネルとタイルは性能の点で似ている部分がありますが、メンテナンスコストにおいてはタイルが、耐震性においてはALCが優れています。
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メリット
50年の耐久性を誇る
1つ目のメリットはなんといっても、ALCの外壁材が高い耐久性を誇るという点です。
適切な使用条件のもとで定期的なメンテナンスを行なっていれば、外壁材の寿命は約50年も保ちます。
これほど高い耐久性が実現できているのは、大きく2つの理由があります。
1つ目は、ALCパネルの内部に補強材として、特殊防錆処理を施した鉄筋マットやメタルラス(スチール製の金網)が組み込まれていることです。
2つ目は、ひび割れや反りの原因となる木繊維・パルプ材などの有機物が含まれていないことなどによるものです。
また近年は、少子高齢化や人口減少に伴って、30年で新しく家を建て替えるよりも一つの家に長く住む傾向が出てきています。
ひとつのお家に長く住み続けたい方におすすめの外壁材です。
高い断熱性・耐火性
2つ目は、断熱性や耐火性に優れている点です。
断熱性に関しては、季節による室内の温度変化を軽減し、室内の温度を一定に保ってくれます。
その効果は、一般的なコンクリートの約10倍にものぼります。
他の外壁材と比較しても、断熱性において優れています。
これは、ALCの構造上の性質として、無数の気泡を含んでおり、それによって空気の層ができていることによるものです。
この空気の層が外部からの熱を断つことで、夏は涼しく、冬は暖かい住宅を実現してくれます。
また、断熱材が高いということは、断熱材と併用すれば、エアコンの使用時間などが減ることから電気代の節約にもつながります。
耐火性に関しては、燃えにくい耐火構造であることから、周囲で火事が起こった場合でも延焼しにくい特性があります。
また、セメントや珪石などの無機質な原料で作られているため、万が一火災が起きた場合でも、ガスや煙などの有害物質が発生する心配がありません。
耐震性に優れている
メリットの3つ目は、耐震性に優れていることです。
ALCパネルが耐震性に優れている理由は2つあります。
1つ目は、ALCパネルそのものが軽量であることにあります。
上でも説明した通り、ALCパネルは構造上、直径0.05~0.1ミクロンの小さな無数の気泡をもっており、一般的なコンクリートの約4分の1の軽さを誇ります。
建物が軽いということは、地震が起こった際の揺れや建築物にかかる負担の軽減につながります。
2つ目は、ロッキング構法によるものです。
ALCパネルは、通常ロッキング構法で取り付けられます。
ロッキング構法とは、地震が起こった際に構造体(鉄骨)が変形した場合でも、ALCパネルが回転(ロッキング)することで変形による損傷を小さくすることができる構法のことを言います。
施工の際は鉄骨などの構造体に複数のALCパネルを取り付けるのですが、地震などの外からの力が加わったときには、パネルが1枚ごとに微妙に回転することで、並んでいるALCが全体的に少しずつ傾きます。
そうすることで、地震による建築物の損傷を小さく済ませることができるのです。
過去の大地震においても、構造物の限界を超えて変形・破壊された場合を除いては、ロッキング構法で取り付けられたALCパネルはほとんど損傷を受けませんでした。
遮音性が高い
メリットの4つ目は遮音性が高いことです。
ALC外壁は、内部にたくさんの気泡を含んでいます。
その気泡が音を吸収することで、周囲の騒音も住宅内に伝わりにくくなります。
その効果は、音の大きさが体感値で半分ほどまで減少すると言われています。
お家の近くに電車が通るという方や周囲の音が気になるという方は、ALCパネルを検討してもいいかもしれません。
その他のメリット
そのほかにもいくつかメリットがあります。
例えば、デザインの自由度が高いこともメリットとして挙げられます。
ALCパネルは、種類によっては表面にデザイン加工を施した意匠パネルがあります。
さらに、そのパネルにどの色の塗装をするかによっても、ご自身の好みに合わせてデザインを施すことが可能です。
また、調湿性にも優れています。
ALCパネルには小さい穴がたくさん空いているため、室内の空気中の水分量をコントロールすることで、結露の発生を抑えて空調を整えることができます。
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デメリット
ここまでメリットを説明してきましたが、もちろんデメリットもあります。
ここからは、ALC外壁のデメリットについて説明していきます。
吸水性が高い
デメリットの1つ目は、吸水性が高いことです。
吸水性が高い理由としては、主成分がセメントであることと、外壁内部に透湿シートが貼られていないことが挙げられます。
ALCパネルは主成分がセメントであるため、防水性はなく、水を非常に吸いやすくなっています。
また、サイディングボードであれば外壁内部に透湿シートを貼りますが、ALC外壁の場合は貼りません。
塗膜が防水機能を果たしているうちは問題ありませんが、経年劣化などにより塗膜の機能が低下してくると、ALC外壁内部の気泡に水が侵入しやすくなります。
ALC外壁に水が侵入した状態を放置すると、冬場の寒さによって内部の水が凍結・膨張することでひび割れが発生し、建築物そのものの耐久性が低下する恐れがあります。
そのほかにも、侵入した水が原因となって、雨漏りを起こす可能性もあります。
そのため、定期的に塗装をしたり、防水性の高い塗料を仕上げることで、外壁内部に水が侵入しないようにすることが大切です。
他の外壁材よりも初期コストが高い
上の表を見てもらえれば分かる通り、他の外壁材と比較して平米単価が高額となっており、初期費用が高くなります。
しかし、その分ALC外壁はサイディングなどと比べて機能性が総合的に高く、寿命は長いです。
ALCパネルは、品質を担保するために「JIS A 5416」という日本工業規格の認証を取得した企業以外は生産できないようになっています。
この規格の認証を受けているのは日本で3社のみであり、このことからも、ALCパネルは高品質であると言えます。
ご自身のライフプランに合わせて、そのお家にどれくらい住みたいのかなどを考えて選ぶようにしましょう。
また、定期的な塗装の費用がかかることも考慮した上でどの外壁材にするか考えると良いでしょう。
左官仕上げや石張りには適さない
ALCパネルの上からモルタルなどの左官仕上げをすると、剥離や漏水などの恐れがあり、左官仕上げには適していません。
また、ALCパネルは表面の強度が一般的なコンクリートに比べて弱いため、重量のある石材や大型タイルなどを直張りすることはできません。
つなぎ目(コーキング)が多い
ALCパネルの施工方法はモルタルなどの塗り壁とは違い、建物に取り付けていく形になります。
建物に取り付けるという施工方法自体はサイディングボードと共通していますが、ALCパネルはサイディングボードに比べて一枚あたりのサイズが305mm×605mmと小さいため、その分外壁材同士のつなぎ目(目地)が多くなります。
これはつまり、コーキング(シーリング)の面積がサイディングボード壁に比べて大きいということになります。
コーキング(シーリング)は、外壁に関する材料の中でも最も劣化が早く、劣化を放置しているとその隙間から雨水が侵入して雨漏りにつながってしまいます。
まとめると、
ALC外壁はサイディングボードに比べてコーキングの面積が大きく、その分劣化したところから雨水が侵入して雨漏りにつながる危険性が高い
ということになります。
ALC外壁の劣化を防ぐには、10年を目処に、コーキング(シーリング)材でつなぎ目をしっかりと埋めることが大切です。
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ALCパネルを外壁に用いる際の注意点
防水性や弾性の高い塗料を使用する
先程のデメリットでも説明した通り、ALC外壁は吸水性が非常に高いです。
そのため、塗装をする際は防水性の高い塗料を選んで、外壁表面の防水機能をしっかりと高めることが大切になります。
また、弾性の高い塗料を選ぶのも大切なポイントになります。
一般的には水性塗料が用いられ、価格の安い順に、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系の塗料が使用されます。
どの塗料を選ぶかは、ご自身の予算と相談して決める形になると思います。
ぜひ業者と相談した上で適した塗料を選ぶようにしてください。
コーキングの補修に注意
先程のデメリットでも説明した通り、ALC外壁は目地(コーキング)が多いことが特徴です。
目地(コーキング)は外壁に関する材料の中でも劣化しやすい箇所です。
コーキングの劣化を放置すると、その隙間から雨水が侵入して雨漏りにつながる危険性があるため、10年を目処に、定期的に打ち替えを行うようにしましょう。
定期的な点検・メンテナンスを
先ほども説明した通り、ALC外壁は小さな穴が空いている分、水分を吸収しやすくなっています。
そのため、塗装による防水性が失われると、雨水が染み込みやすくなり、内部の鉄筋の腐食や雨漏りにつながってしまいます。
ALC外壁内部の鉄筋は、お家の強度を強めるためのものであるため、錆が発生して腐食してしまうと、お家自体の耐久性が低下してしまいます。
塗料のグレードにもよりますが、耐久年数を見ながら、10年〜15年を目処に業者に点検してもらうことをお勧めします。
もちろんご自身でもチェックすることは可能ですが、素人には分からない部分や、専用の機械を使わないとわからない部分などは業者に任せた方が良いでしょう。
ご自身でチェックする際は、以下の劣化症状が目立っていないかを確かめるようにしましょう。
・チョーキング(白亜化現象)
・色褪せ
・苔、藻
・塗膜の剥がれ
・コーキングの劣化
ALCパネルの価格相場
ALCパネルの価格相場は上の表でも説明した通り、およそ7,500円〜16,000円/㎡になります。
塗装する際の費用相場は、塗料のグレードや劣化の状況によっても前後しますが、外壁のみでおよそ80万円〜150万円ほどかかります。
ALCパネルを取り扱うメーカー
先ほど、ALCパネルの生産はJISで定められた規格の認証を受けた国内の3社で行われていると説明しました。
その3社は以下の通りです。
・旭化成建材(株):ヘーベルライト・ヘーベルパワーボードなど
https://www.asahi-kasei.co.jp/
・住友金属鉱山シポレックス(株):シポレックス・スーパーボードなど
http://www.sumitomo-siporex.co.jp/
・クリオン(株):クリオンライト・クリオンエースボードなど
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今回は、
【ALCパネルとは】
・ALCパネルの種類
・その他の外壁材との比較
【メリット】
・50年の耐久性を誇る
・高い断熱性・耐火性
・耐震性に優れている
・遮音性が高い
・その他のメリット
【デメリット】
・吸水性が高い
・他の外壁材よりも初期コストが高い
・左官仕上げや石張りには適さない
・つなぎ目(シーリング)が多い
【ALCパネルを外壁に用いる際の注意点】
・防水性や弾性の高い塗料を使用する
・コーキングの補修に注意
・定期的な点検・メンテナンスを
について説明してきました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
以上、サニー建設商事でした。
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